凪の言動、共感できたりできなかったり…それでも何故か読んでしまう!

今日はEleganceイブにて、2016年8月から連載している『凪のお暇』をレビューします。

作者は埼玉県出身のコナリミサトさん。2004年デビューの、現在も大活躍の漫画家さんです。

『凪のお暇』は2019年に黒木華さんの主演で、TBSにてドラマ化されています。

コナリミサトの他の作品では、2021年に中村倫也さん主演で、テレビ東京にて『珈琲いかがでしょう』もドラマ化されています。

『凪のお暇』はドラマでは10話で完結となっていますが、連載はまだまだ続いており、この先も楽しみな漫画のひとつです。

空気は読むものでなく、吸って吐くもの

主人公の大島凪は、大人しめのアナウンサー的なファッションに身を包んだ、気遣いのできる清楚系女子。

しかしそれは、凪が社会の中で生きやすくいるための仮の姿に過ぎません。誰もが羨むサラサラのストレートヘアも努力の賜物、いつも穏やかなニコニコ顔もただ張り付けただけの仮面なのです。

同僚たちに誘われていく゛ごほうびランチ゛も凪にとっては出費が痛く、ただただ苦痛なだけの時間です。

おしゃれで豪華なランチを前に、同僚たちが繰り広げるカードの切り合いのようなトークを前にして、凪は焦りばかりを募らせます。

そして何もカードを切れない凪は、同僚たちにとってはちょうどいい゛サンドバッグ゛となってしまいます。

客観的に見ていると、なんでこんなとこにいるの?どうしてこんな人たちとつるんでるの?と、思ってしまうのですが、当事者になってしまうと「抜け出せない」、と思い込んでしまうものなのでしょう。

そんな社会に従順に生きてきた凪ですが、ある日突然自我が爆発してしまいます。爆発したあとには何が残るのか、凪は自由になれるのか、そもそも凪にとっての自由とはなんなのか…

社会からのドロップアウト、つまり゛お暇゛で答えを見つけようとする物語なのです。

お暇先で出会うもの

凪がお暇をして、それまでのものを全てリセットしてしまいます。家、仕事、連絡先…それらをリセットした凪はレトロな郊外のアパートから生活をスタートします。

これまでのおしゃれな都心のマンションでの生活からは考えられないような、不便で質素な暮らしです。

そのなかで凪は、自分がいきいきと生活できる方法を模索し始めます。また、新生活を送るうちに、新たな出会いも発生します。

上の階に住む老女、隣のヤバそうなパリピ、美しい猫のような母娘です。新たな出会いではなく、リセットしたなかからゾンビのように復活してきた、営業職のコミュ力おばけの元カレもこの新たな人間関係の中に自ら組み込まれます。

老女を見て、自身の先行きに不安を覚えますが、すぐに考えを改めたりします。一見すると、貧しく惨めな老後の一人暮らしといった風情なのですが、その実態を目の当たりにした凪は「豊かだ」と感じます。

ここで凪は、自分が求める幸せや豊かさとは、一体何なのかを見つめ直すきっかけとなっていると思います。

さらに隣人のパリピとは恋に落ちるのですが、この男の厄介さは、わかっていながらなかなか抜け出せないところです。

さらに元カレですが、この元カレの存在は凪とって大きなくさびとなっています。その一方で、元カレの言動から大きな気付きを得たりもします。

凪から見たら、悪魔だったり天使だったり、目が離せない存在です。

注目!凪のライフハック

タブーの海藤優

作品のストーリーも去ることながら、凪や他の登場人物たちがときおり披露する生活の知恵やお手軽レシピなども注目のポイントです。

凪は何もない部屋からスタートするのですが、とりあえず何か食べてなくてはと作るのが゛すいとん゛です。

私は小学生の頃、地域のお年寄りに昔の食べ物を教わろう的なイベントで食べた記憶があります。戦時中に食べていたそうです。

小麦粉を水を加えつつ適当にちぎって、どんどんお湯に放り込むという至ってシンプルで素朴な料理です。

何もない狭い畳の部屋で、凪はこのすいとんを自家栽培の豆苗を入れて、スープにして食するのです。それが凪の新生活の第一歩、として描かれています。

その後もごみ捨て場から拾ってきた扇風機をスプレーで色づけしたり、熟れすぎたゴーヤの種の部分をスプーンですくって甘みを楽しんだり(ラッキーゴーヤと命名しています)、某有名ビスケットを牛乳で浸して新たな食べ方を提案したりします。

凪以外にも、老女は食パンのミミを作ってポッキーを手作りして凪に振る舞います。

隣のパリピは、ツナや鯖の缶詰をアウトドア用のバーナーで直に熱し、調理したものを食パンに乗せて食べる、というキャンプ飯で凪を喜ばせたりします。

本当にちょっとしたことなので、知っている人からしたらなんてことない流れなのですが、逆にちょっとした情報なので調べても出てきにくい情報ばかりです。

読みながら、「あ、これメモっとこ」となって読み止まってしまうことも何度もあったので、油断できないです。

お暇、してみる?

職場で真っ先に帰るわけにいかない゛雰囲気゛、理由もなく飲み会を断るとなんだか淀んでしまう゛空気゛、別にすごくもなんともないけど褒めておくべきという゛流れ゛、一番下っ端だから説教されておく゛キャラ゛…

どこかしらの集団に属する限り、これらから完全に自由になれる人というのはそう多くはないと思います。

さらにいえば、これらのお陰で人間関係が潤滑であったり、自分自身も快適に過ごせたりといったメリットも多分にあります。

しかし、それが行き過ぎてしまい、気遣いや打算それ自体がストレスとなってしまっては本末転倒です。

社会に生きる多くの方が、周囲の調和と自身の心とのバランスを取りながら生活しており、そのバランスはかなり絶妙なところで保たれているんだと思います。

バランスを保てているうちは大丈夫でしょうが、もし同調圧力のようなものに押し潰されそうになったら、お暇してもいいのかもしれない…そんなことを思わせられました。

いかがでしたか?自分だったらどんなお暇にしよう?と考えるながら読むのも楽しい作品だと思います。お読み頂き、ありがとうございました!

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