2016年〜2020年に週刊少年ジャンプで連載されていた「鬼滅の刃」といえば、2019年にufotable制作のTVアニメ版、翌年2020年10月公開の劇場版が大ヒットし、2021年2月に単行本(全23巻)の累計発行部数が1億5000万部を突破した国民的人気の少年漫画です。
「鬼滅の刃」は日本の大正時代を舞台に、主人公の少年・竈門炭治郎(かまどたんじろう)が鬼にされてしまった妹・禰豆子(ねずこ)を人間に戻すため、人を喰らう鬼と戦う姿を描く物語です。
今回はその中心となる竈門兄妹、二人の類似性について考察していきたいと思います。
竈門家の長男・炭治郎と長女・禰豆子
まず、竈門兄妹を語る上で重要なファクターのひとつに家族の存在があります。
竈門家は代々炭焼きを営む家系で、父・炭十郎、母・葵枝、長男・炭治郎、長女・禰豆子、次男・竹雄、次女・花子、三男・茂、四男・六太の8人家族でした。
父・炭十郎は物語開始の時点で病気によって他界しており、炭治郎が炭焼きで家系を支えていました。決して裕福とは言えない暮らしの中、母と兄弟たちは身を寄せ合って仲良く暮らしていましたが、ある日その些細な幸せは鬼によって壊されてしまいます。
悲劇に見舞われた竈門家ですが、回想の中での彼らは非常に仲睦まじく理想の家族の姿がそこにはあります。そんな家庭で育ったからこそ、今の竈門兄妹が存在するのでしょう。
肝心な炭治郎と禰豆子は似ているのか?という点ですが、外見面から見るとそれほど似てはいないのではないかと思われます。
炭治郎の顔は明らかに父・炭十郎似ですし、次男・竹雄もそうですが先祖の炭吉など時代を遡っても見ても、竈門家の男子はこういった顔の系統なのかもしれません。
一方の禰豆子はというと炭治郎曰く「町では評判の美人」だったらしく、次女・花子とともに兄弟の面倒も良く見ているなど、母譲りのしっかり者で器量よしな面が窺えます。
父似の炭治郎と母似の禰豆子、外見的類似点はあまり見られない二人ですが、内面においてはどうでしょうか。
「優しい」だけじゃない主人公・竈門炭治郎
炭治郎の赤みがかった髪や瞳は生まれつきですが、左の額に大きく目立つ赤い痣は元々、幼少時に弟の竹雄が火鉢を転ばせてしまい、彼を庇った結果負った火傷の痕でした。(さらに濃くなった理由としては鬼殺隊士の最終選別時にて手鬼の攻撃による変形が原因)
こういったエピソードから家族思いであることはもちろん、人のために自分が傷つくことも厭わない、ある意味自己犠牲的なまでの、優しい心根がよく表れています。
そんな炭治郎が他者に怒るとすれば、一体どんな時なのでしょうか。
藤襲山での最終選別の際、女の子に乱暴を働いた少年・玄弥に対して「手を離さなければ腕を折る」と忠告し、実際そのとおりにするのです。ただ優しいだけではなく、誰かを傷つける者に対する厳しさが見られました。
炭治郎が感情的に怒る場面で印象的なのは、無限列車での任務の時です。
列車の上で下弦の壱・魘夢(えんむ)との戦闘中、炭治郎は殺された家族に責め立てられる悪夢を見せられますが、この攻撃は心を折るどころか、怒りに火を付けてしまう結果になります。
「言うはず無いだろう、そんなことを、俺の家族が!!」と、彼は家族を侮辱されたことに対して激しい怒りを感じる訳です。
炭治郎の優しさに驚かされる場面はいくつもありますが、いつも穏やかな彼が怒りの感情を露にする時は、決まって誰かのためなのです。
ヒロイン・竈門禰豆子の内に秘めた強さ
原作・アニメともに第1話、いつものように炭売りの仕事に出かけた炭治郎が一晩家を不在にしている間の出来事でした。
全ての鬼の始祖・鬼無辻無惨の襲撃を受けて、禰豆子を除いた家族全員が惨殺され、唯一生き残った禰豆子さえも傷口に鬼の血を浴びてしまったことで鬼と化してしまいます。
この時の禰豆子は傷付き大量の血を流したせいで、鬼特有の飢餓状態に陥ります。
飢餓状態の鬼は人の血肉、特に栄養価の高い肉親のものを欲するという残酷な習性があるのですが、彼女は助けに来た炭治郎に襲い掛かりながらも兄の必死の呼び掛けで涙を流し、鬼殺隊の冨岡義勇に攻撃された炭治郎をかばうなど、普通の鬼では考えられない様子を見せます。
このように物語の冒頭からすでに尋常ならざる精神力・自意識の強さが計り知れるのですが、鬼と化してなお人を守ろうとする禰豆子が人間だった頃の貴重なエピソードがあります。
かつて弟の竹雄が語った、小さい子にぶつかって怪我をさせたガラの悪い大人に対して謝るように怒ったことがある、という話。
竹雄曰く「人のために怒る人は、自分の身を顧みない所がある」という点で、誰かのためなら我が身を顧みない精神性が炭次郎と重なるのです。
竈門兄妹、優しく強く重なる姿
ここまで二人の外見から内面に至るまで考察する中で見えてきたのは、彼らの優しさや怒りがいつだって、誰かを思いやる心から生まれたものだということ。
「人を傷つける者を許さない」正義感の強さ、「他人のためならば自分自身を顧みない」自己犠牲の精神に溢れた竈門兄妹。いかなる時も人のために怒り人のために戦う二人は性格・スタンスにおいて非常によく似ている、と結論付けることが出来るかと思います。
話題の遊郭編においても彼らのそういった面が色濃く描かれており、竹雄は前述のエピソードの中でこんな風に危惧していました。
「そのせいでいつか 大切なものを失くしてしまいそうだから 怖いよ」
お互いを思いやり人のために戦う似た者同士の兄妹の旅の行く先を、まだアニメの内容までしか知らないという方にもどうか、物語の終わりまで見届けて頂きたいと思います。
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