「ヒカルの碁」は、週刊少年ジャンプで連載され大人気を博した漫画です。
今でこそ「3月のライオン」や「りゅうおうのおしごと!」等、次々とヒット作が生まれる時代になりましたが、当時は囲碁や将棋というジャンルにスポットを当ててヒットしている作品は無く、まして少年誌では異色であり異例の作品でした。
そんな本作品が、一体何故!?ここまで読者達の支持を集め、大人気作となるに至ったのか?
まさに「当ジャンル先駆け」となった理由を考察していきます。
目次
囲碁を全く知らなくても面白い!
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本作品の一番凄いところになりますが、囲碁のルールを一切解っていなくても、全てにおいて面白いように作品が作られていることです。
囲碁というマイナージャンルに加えて、少年誌の対象となる読者層や対象年齢は小中学生中心。
ルールを知らない割合のほうが自然と大多数になります。
そんな中でも「ヒカルの碁」は、それを全く問題にしないアプローチを用いて、読者を次々と惹き付けていきました。
主人公と読者層の年齢・年代を完璧にマッチさせた!
主人公を進藤ヒカルという小学生に設定し、彼が中学生、そしてプロの道へ。
という、読者層と年齢年代を完璧にマッチさせたことで、自らを主人公に重ねたり、同年代の活躍に刺激を受け易いようにしてある点も、大きな要素の一つになっています。
そして、初心者層には特に、囲碁の細かいルールや手順等よりも、その戦いの臨場感や緊張感、迫力の部分を全面的に推し伝え、盤面へ向かう棋士達の心理描写や、駆け引きに注目することで、読者にワクワク感を与える工夫が施されています。
玄人層に対しても、きちんとした棋譜の中に、それに基づいたドラマチックな手順や、大どんでん返しが生まれるように作られているため、無理矢理あり得ないような内容を展開する訳ではなく、どちらの層からも受け入れられる作品となっています。
藤原佐為という存在!
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「ヒカルの碁」の連載当時は、「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンドや、「シャーマンキング」の憑依合体等、偶像や心霊をパートナーにして戦うというトレンドがありました。
そんな中で、本作に登場したのが藤原佐為(ふじわらのさい)であり、彼は平安時代の天才棋士の霊になります。
ヒカルが祖父の家の蔵にあった、古びた碁盤を見つけたことがきっかけでした。
その後二人は、ヒカルに取り憑いた佐為と友達のようにやり取りするようになり、そこから囲碁の道へと足を踏み入れていきます。
この温かくもほっこりする二人の楽しげな様子は、まさにこの時代のトレンドに即していて、読者を惹き付けていきました。
涙無くしては見れない!ファンの間ではずっと色褪せない名シーン?
そして、佐為はヒカルの師として碁の指導を指南し、時にはヒカルの体を借りて幾多の強敵達と戦います。
伝説の碁聖と呼ばれ、現代のタイトル戦にも名付けられている、本因坊秀作の幼少期、虎次郎をも指導していた彼の腕前実力は本物で、作中最強棋士として次々と立ちはだかる敵を撃破していきます。
その手筋、棋風、所作、仕草、雰囲気と、どれを取っても、きらびやかで美しく、流れるように優雅な様子は、最強キャラクターというのも相まって、多くの読者の支持と人気を集めました。
彼とヒカルの最期の別れとなる名シーンは、涙無くしては見れない、ファンの間ではずっと色褪せず、今でも語り継がれています。
思春期ならではの葛藤とその後の成長を描いて!
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「ヒカルの碁」は、同週刊少年ジャンプで大ヒットとなる、「DEATH NOTE」と「バクマン」の、小畑健が作画担当している作品で、その圧倒的な画力が本作にも存分に活かされています。
それぞれの年代での描き分けも非常に巧みで、作品序盤の小学生時代のヒカルは、丸みを帯びて少しふっくら見せますが、中学生の思春期の1~3年間では、年を追う毎にみるみる輪郭からシャープになっていきますし、この年代特有の、大人とは全く違う成長スピード、成長力を年単位で作画からも伝わるように工夫されています。
また、一般社会を生きる周りの友達と、囲碁の世界に身を置く自分との進路の違いや、囲碁の道を本気で突き進むライバルや、同世代の仲間達との間で生まれる、本気度の違いや様々な葛藤等々、囲碁の盤面以外での、沢山の人としての成長部分にもスポットを当てた作品になっています。
主人公ヒカルの姿に多くの読者が心を打たれた!
そして、出会いや別れを繰り返し、時にはその道を進む目的や目標を失いながらも、また自分の在るべき処を再び見つけて戻って来るヒカルの姿には、多くの読者が心を打たれました。
ヒロインである藤崎あかりちゃんとの関係性も微笑ましく描かれていて、小学生の頃のヒカルと、中学を卒業する頃のヒカルの、彼女への対応の違いも、大人に近づいた成長を感じさせてくれます。
アニメの圧倒的なクオリティ!
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「ヒカルの碁」は、漫画の人気振りからアニメ化もされましたが、そのクオリティが当時のアニメの中では圧倒的です。
作画の美しさに加え、主題歌の「Get Over」が大ヒットし、その他の挿入歌やBGMの質も非常に高く、作品の臨場感や緊張感を際立たせてくれます。
主人公、進藤ヒカルを演じられた「川上とも子」さんの高い演技力も素晴らしく、少年期の無邪気な様子や、佐為がいなくなってしまってから、日本中を駆け回って彼を探し続けた焦燥感、そして、何処にもいなかった彼が、自分の打つ碁の中に唯一居たこと。
それを見つけ、涙を流す姿等々、迫真の名演技による名シーンは、今でも語り継がれています。
その甲斐もあってアニメも大ヒットとなり、今尚愛され続けている、日本の誇れる素晴らしい名作漫画です。
まだ読んでいない人は一読することをオススメします。
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