日本を代表するロボットアニメである「機動戦士ガンダム」のデザインを担当した、安彦良和先生による漫画作品。
「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」を下地にし、アニメエピソードでも伝説として語り継がれている。
あの「ククルス・ドアンの島」をテーマに描かれる、一年戦争の語られざる人々の物語となる「機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島」は何故にククルス・ドアンは軍を抜け、そして残された者達は、どんな思いを抱きながらに、戦場へと赴いたのか、一年戦争という激動の中を生き抜く兵士達の物語の魅力を語りたいと思います。
目次
テレビ放映された「ククルス・ドアンの島」についてのおさらい
さて機動戦士ガンダムのアニメが放映されていた時、このククルス・ドアンの島は、後のファンからは伝説の回となり、神回とも言われ、また作画崩壊していたのに良い話だったと言われるぐらいに、機動戦士ガンダムのテレビ版を見ていたファンの間では有名なエピソードとして知られています。
まず物語となるククルス・ドアンの島は、ガンダムの主人公であるアムロが、コアファイターに乗って島を偵察に向かい、そこでククルス・ドアンの乗るザクに遭遇し、コアファイターを撃墜されてしまう事からはじまります。
アムロはククルス・ドアンに助けられ、彼がジオンから脱走した兵士と知ります。
ククルス・ドアンは、戦争の最中で子どもの親を殺した罪悪感から、その子達を救い、戦火の届かない無人島で子どもたちの面倒を見ていた善人として描かれていきます。
しかし脱走兵である彼は、ジオン軍から追われる事となり、ククルス・ドアンを追ってきたジオンのザクと交戦する事となります。
終わらぬ戦いに苦悩し、そんな彼を救う為に、彼の乗るザクを海へと投機したアムロ。と、当時においては実に感慨深い作品として有名となりました。
しかし作画が崩壊しており、ガンダムの顔やククルス・ドアンの乗るザクがあまりにも崩壊していたことからも、強烈なエピソードとして残る事になった本作。
戦争によって自分の罪を償う為にと、子どもの世話をし、そして敵の追撃に怯えていたククルス・ドアン。
彼が捨てる事の出来なかった武器を捨て、ようやくに子どもと向き合える勇気を持てたと、当時のロボット作品の中では斬新なエピソードとして注目されるも、後のガンダムの映画化においては、そのエピソードは語られる事はなく、半ばなかった話として見られていました。
ククルス・ドアンを主役にした、彼の目線と、また仲間達によって描かれた、知られざる物語が、この「機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島」なのです。
漫画版ククルス・ドアンの島で描かれていく物語についての魅力
本作「機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島」では、機動戦士ガンダムの主人公であるアムロの視点で描かれた物語ではなく、ジオン公国の軍人であるククルス・ドアンが、どんな人生を歩み、またどんな経験をし、そして何を失い、何を得たのかと、知られざる彼の物語として描かれた内容となっています。
まず本編ではククルス・ドアンは特務少尉として登場し、ジオン公国軍開発訓練Y-02小隊の小隊長として登場します。
彼は一年戦争の主力モビルスーツとなるザクの開発に関わり、またコロニー落としなどの作戦にも従事した事があると、一年戦争の大きなターニングポイントに携わっていた重要な人物として登場していきます。
軍人としてジオン公国の任務を全うし、その結果に家族を失ってしまった彼。自分が携わったある作戦により、家族を死なせてしまい、ジオンへの忠誠を捨て、地球のいずこかへと去ってしまう事となります。
そんな彼の部下であった、この作品のもう一人の主人公であるヴァシリー・ボッシュ少尉の視点から、何故に彼は軍を去り、そして自分達を戦場に残していってしまったのかと、ククルス・ドアンに抱く失望と、それでも彼を信じたいとする渇望の中で、物語は進みます。
そして戦乱の時代は流れていき、一年戦争の戦いは激化していくと、抗えない時代の流れを感じさせる、切なく、そして儚い日々を見せてくれる内容となっています。
ククルス・ドアンを知る仲間達の視点。
本作の物語に置いて、ククルス・ドアン以外の登場人物の視点から描かれていく、部下の視点から見たククルス・ドアンの人物像も注目に一つとなります。
まずククルス・ドアンを信頼していた伍長のヴァシリー・ボッシュは、劇中の中で、この一年戦争の在り方や、また自分達のする事が、汚れ仕事であるも、それは軍にとっては必要な作戦なのだからと、疑問と疑念を抱きながらも任務を遂行した軍人として描かれていきます。
しかし尊敬していた筈のククルス・ドアンが軍を脱走し、何故に彼が軍を裏切ってしまったのかと、彼に対する忠誠心に悩む事となります。
そして彼もまた部下を持つ上官となり、この戦争の在り方を考えるようになると、もう一人のククルス・ドアンとしての側面を見せていく事となります。
そしてククルス・ドアンと同期であり、また彼と共に戦争開始からモビルスーツ開発に携わっていたパイロットのサッシャ・キッツ少尉は、戦友である自分に何も言わずに去る。
姿を消したククルス・ドアンを恨むも、心のどこかでは同情し、彼の失った心中を察している人物として登場していきます。
何故に彼は軍を去ってしまったのか、この戦争で失い続ける人生に嫌気をさしたのだと、自分もまた失い、奪う立場であった事から、この戦争の在り方に悩み、苦悩し、それでも生きる為にと向き合う事しか出来ない登場人物達。
明日も知れない日々を葛藤しながらも、それぞれの答えを見つけ生きていく道を模索しなければいけないと、一年戦争を別の視点から描かれてもいます。
ククルス・ドアンの抱いた想いとは?
この物語においては、ククルス・ドアンを視点にしながらも、彼と関わった人間達のそれぞれの想いなどを中心に描かれた物語として描かれています。
ククルス・ドアンが何故に軍を去り、戦争から逃げてしまったのかと、ただ怯えて逃げたのではなく、また嫌気がさしたのではなく、自分の選んだ選択の結果で歩んでいったのだと。
ただ時代に流され、翻弄されるのではなく、抗いながらも、この時代の中で自分が成せるべき反抗をするが為に、軍を去ったのだと、彼の決断は意味があるものだったと、それを痛感できる内容となっています。
逆らえない時代の流れの中に、その身を置く事となってしまったククルス・ドアン。
彼もまた一人の英雄であり、人間であったと、ククルス・ドアンの強さと、その魅力が描かれた作品でもあります。映画を観る前に、その前日譚ともなる彼の知られざるエピソードに触れてみてはいかがでしょうか?
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