シャドーハウスとは、週間ヤングジャンプにてソウマトウ先生により連載中のファンタジー漫画です。
2021年にはアニメ化もされました。そんな本作の舞台は、中世の貴族社会のような架空の世界。
貴族の真似事をする顔のない一族「シャドー」と、そのシャドー家に仕える「生き人形」達を中心とした物語となっています。
序盤は「生き人形」のエミリコと「主人」であるケイトの、絵柄通りほのぼのとした日常が描かれていきます。
が、次第に状況は不穏な影をちらつかせ始め…。
可愛い絵柄に隠されたシャドーハウスの不気味な謎を、いくつかご紹介します。
「シャドー家」の謎
そもそもシャドー家の、顔のない一族とはどういう意味なのでしょうか。
一族は全員、影のように真っ黒に塗り潰されて描かれています。身に付けている衣服等は普通ですが、そこから覗く素肌は真っ黒。
当然顔も真っ黒で、表情など分かる筈もありません。
主人公の一人である若きシャドー家の一員、ケイトも影のような姿に貴族のようなドレスを身に纏っています。
彼女達の感情を読み取る手段の一つとして特徴的なのが、「煤」です。
シャドー家の者は皆、良くない感情の昂ぶりと共に体から「煤」を出します。
その量は個人差があり、また感情の大きさによっても変化するようです。
例えば単行本一巻の第四話では、エミリコがケイトとの約束の時間に寝坊してしまいます。
恐る恐る部屋に行くと、そこには静かに怒るケイトの姿が。
頭の先から煤を立ち上らせ「見て、まるで黒い雪のようだわ…」とケイトが言ったベッドの上には、大量の「すすだるま」が並んでいます。
すすだるまとは、煤で作っただるまのこと。ケイトは怒りで出続ける煤でだるまを作りながら、エミリコを待っていたようです。
その数の多さから、エミリコは主人の怒り度合を知るのでした。
数々の謎を隠すシャドー家の中でも、この煤は意外と重要な能力とされています。
そして同時に、シャドー一族の存在そのもの、また、エミリコ達「生き人形」の存在の謎にも深く関わっているのです。
真っ黒で顔がなくて体から煤を出し、でも貴族のように振る舞っている。
はたしてシャドー一族とは何者なのでしょうか。
「生き人形」の謎
単行本一巻では「生き人形」のことを、シャドー家に仕える人のようなもの、と説明されています。
人のようなもの、という微妙な記述ですが、食事も睡眠も必要ですし、痛みも血もあります。
まるっきり人間ではないかと誰もが思うでしょうが、シャドー家はもちろん生き人形本人ですら、人間扱いしていません。
生き人形はあくまでシャドー家のための人形なのです。
エミリコは天真爛漫にケイトのお世話をする、頑張り屋さんの生き人形です。
ケイトとは正反対の性格で、しょっちゅうドジをやらかします。それでも前向きに一生懸命ケイトの為に尽くす姿は、本当に可愛いです。
そう、エミリコをはじめ他の生き人形は皆、何の疑いもなく自分の主人が大好きなのです。
朝から晩まで主人が出した煤で汚れた部屋を掃除し、屋敷全体の煤掃除もしています。
しかし、生き人形の最も重要な役目は、これらとは別にあります。
何度も言いますが、シャドー家は顔のない一族です。生き人形は必ず一人に一体、支給されます。
判別が難しいそれぞれの顔の替わりが、エミリコ達生き人形というわけです。
実際、単行本一巻の第十一話で、エミリコは初めて「顔」として振る舞う生き人形の姿を目にします。
生き人形同士で作られた班で、一緒になった先輩のミアでした。
ミアの主人はサラといい、やはり表情が分かりません。しかしケイトに嫌味を言うサラがしているであろう表情を、横でミアが忠実に再現しているのでした。
ミア自身は勝手に喋ることはせず、ただただ主人と同じ身振りをして「顔」の役目を果たします。
このシーンだけで、生き人形の存在の不気味さが充分に伝わることと思います。
「お披露目」の謎
アニメでも放送された「お披露目」というイベント。
成人になる為の儀式とされていて、主人と生き人形の適性を見たり、シャドー家に有用な素材かどうかを見たりする、というものだそうです。
年齢に関係なく、このお披露目に合格して「顔付き」になったものが、シャドー家では成人とされます。
つまりケイトとエミリコはまだ子供で、試用期間なのです。
お披露目を取り仕切るのはその、成人した大人のシャドー一族です。
「おじい様と共にある棟」に住んでいて、エミリコ達の住む「子供達の棟」には滅多に来ません。
おじい様とはシャドー一族で一番偉い人、統率者という立場であり、「偉大なるおじい様」と呼ばれています。
生き人形はそう呼ぶことすら畏れ多い存在とされ、生き人形の生みの親と教えられています。
そのおじい様と共にある棟に住んでいる大人は、このお披露目を棟から観賞して楽しみます。
ケイト達のお披露目を担当することになったエドワードは、おじい様達を楽しませる為にケイト達が不合格になるよう仕向けます。
必ず一組は不様に散る者がいなければ、しっかり選別していないという理由で自分の地位が危ぶまれるからです。
このように、お披露目とは残酷に子供達をふるいにかける行為でした。
単行本二巻の第二十二話から始まるこのお披露目編では、子供達を値踏みするかのような大人達の様子が印象的です。
ここで初登場したエドワードなどの大人の存在は、シャドーハウスをさらに不気味なものに思わせました。
例えば、単行本四巻ではお披露目を観賞していた大人の一人が、興奮してシャドー家の者としてあり得ない姿を見せたりします。
シャドー家の者としてあり得ない姿といえば、顔がある状態です。
すぐにまた真っ黒に戻ってしまいましたが、これが何を意味するのかと、色々な意味で衝撃だったシーンです。
お披露目に合格するとどうなるのか、不合格になるとどうなるのか、成人して顔付きになると、ケイトとエミリコの関係はどうなってしまうのか。
そして、偉大なるおじい様とは一体何者で、シャドー家をどうしようと考えているのか。
このお披露目依然と以後で、より一層、謎は不気味さを増していきます。
「忠誠心」の謎
最後に最も重要で不気味な謎をご紹介します。
それは、生き人形のシャドー家に対する盲目的な忠誠心です。
生き人形と主人の関係性は、主人の性格によって様々に描かれています。
ケイトとエミリコは、ケイトが生き人形の個性を尊重する考えなので、比較的良好な関係となっています。
しかし中には歪んだ関係性もあります。
余計なことをしている自分の生き人形を折檻したり、生き人形に性格などなく、ただ顔さえ良ければいいと考えていたり…。
それでも生き人形は文句も言わず、主人に尽くしています。
先輩の生き人形のミアは、最初の授業の時エミリコに言います。
「生き人形はシャドー家に対して忠誠以外の心を持ってはいけない」
ミアだけではなく、他の生き人形も同じ考えを持っています。
この、生き人形の異常なまでの忠誠心と在り方は、とても不気味に思えます。
本人達が何の疑いもなくむしろ幸せそうなのが、より不気味です。
ケイトとエミリコはお披露目以降、この謎の忠誠心の正体を知ることになります。
それを機に、二人は仲間を増やしてシャドーハウスと戦おうとしていきます。
今後も新たな謎が生まれ続けるシャドーハウスから、目が離せません。
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