「鬼滅の刃 きめつのやいば」とは少年週刊ジャンプにて2016年11号から2020年24号まで連載されていた、吾峠呼世晴による日本の漫画作品になります。
連載途中まで他の並み居るジャンプ作品と比べて人気は控えめで、絵の描き込みの緻密さやメインキャラでも容赦なく死んでしまう物語は万人向けともいえず残酷描写の存在も読者を選ぶ漫画でした。
ですが、ある時から一気に「鬼滅」の波がきて、単行本(全23巻)の累計発行部数は、2021年2月時点で1億5000万部を突破しています。その人気の理由はなんなのでしょう?
かまど炭治郎という男
炭治郎の家計は炭焼きを生業とする家の長男として生まれました。父親は早死にしており、母親と5人の兄妹で暮らしていました。
炭治郎はある日、鬼の首魁である鬼舞辻無惨によって家族を惨殺されてしまいます。唯一、生き残っていた妹のねずこは鬼にされていました。
炭治郎の性格は真面目で家族想いです。生真面目な部分と頑固な一面もありますが、嘘つくことが下手で、露骨に顔に出てしまいます。
基本的にはどんな人間に対しても温厚であり、相手を思いやる発言や行動をします。
そのため炭治郎は「鬼殺隊」へと入隊し、無惨の打倒と、ねずこを人間に戻すべく戦いを繰り広げる事になります。
元々山の上り下りをして炭を売っていたため、身体能力は高く鱗滝という人からの厳しい修行を乗り越えた事によって、鬼と渡り合えるほどの身体能力まで成長します。
ですが炭治郎は鬼がどれだけ憎くても、非常になりきる事ができません。
アクロバティックな剣技だけでなく、痛みなく鬼の頚を落とす「干天の慈雨」を使ったり、消えゆく鬼に寄り添ったり、戦闘中にも炭治郎の優しさが見えます。
そんな炭治郎だからこそ、鬼自身も切られてしまったあとも何か悔いのあった事にも成仏するかのように消えていきます。それは炭治郎だからだと思います。
妹、ねずこ
かまど炭治郎(かまどたんじろう)の妹、かまどねずこ(かまどねずこ)。その愛らしいルックスや仕草から、海外でも非常に高い人気を誇るキャラクターです。
ただねずこは元々人間でありながら、鬼となってしまいました。でも兄である炭治郎はねずこを見捨てず、「人間に戻そう!」と、最後まで諦めません。
炭治郎の旅は鬼の撲滅もありますが、ねずこを人間に戻してもらうために鬼を作った張本人を探しているのです。
以後、ねずこは2年間の起きる事なく眠り続け、鬼殺隊に入隊した炭治郎とともに鬼と戦うことに。
ねずこも鬼ですから人を食べる性質は持っていましたが、睡眠中に性質が変化したのと、炭治郎の師匠・鱗滝左近次(うろこだき さこんじ)の暗示で人間がみな守るべき家族に見えていることから、同族殺しの鬼として戦えるようになったわけです。
鬼の姿ではありながらも、炭治郎を守りながら戦います。時に炭治郎がやられてしまう場面があると、気持ちが高まってしまい鬼化が進んでしまいます。
ですが炭治郎はそうなって欲しくないために止めに入ります。お互いがお互いを思いやりながらも戦い続ける姿に兄弟愛を感じつつ、ねずこは戦いを重ねるごとに強くなっていくんです。
のめり込みやすい設定
もちろん物語としての魅力もヒットに貢献しています。それは誰もが愛し、はまりやすい設定であり、「鬼」と「鬼殺隊」の敵味方の対立がシンプルでのめり込みやすいからです。
また、鬼殺隊は複数の隊に分かれたチーム制、さらにそれぞれの隊は「柱」と呼ばれるリーダーを中心にヒエラルキーが設けられています。
このなかで友情、ライバル、先輩後輩といった構図が生まれるようになります。それぞれの立ち位置から多彩なキャラクター設定が可能になるからです。
ただ内容は「死」について。「死」を真っ向から向き合っているアニメというのもなかなか珍しいですが、「鬼滅の刃」では重要と思われるキャラクターも次々と死んでいきますが、悲しむまもなく目まぐるしくストーリーは進んでいきます。
そんなストーリーに翻弄され、いつの間にか読者はどっぷりとこのダークな世界観にハマってしまっているのかもしれません。
炭治郎や鬼殺隊の人たちの成長は読者の心に深く刻まれます。それは敵である「鬼」も例外ではなく、忌むべき存在とは言い切ることができない悲哀が見え隠れします。
単純な勧善懲悪で片付けることができないストーリーは、ほかのジャンプ作品とは一線を画しているのではないでしょうか。
アニメの効果
マンガのアニメ化が、単行本の売上げを大きく伸ばすとよく言われます。それはこれまでも「進撃の巨人」などで見られました。
それでも「鬼滅の刃」の放送前からの累計発行部数の伸びは、一年足らずで10倍近くと群を抜いています。
2019年のオリコン年間コミックランキングによれば、「鬼滅の刃」の発行部数は1205.8万部、2位「ONE PIECE」の1080万部を上回り第1位に輝きます。
2019年4月のテレビアニメ放送開始以降、急激に伸びました。
テレビ放送前の3月の段階で累計発行部数は450万部。テレビアニメ終了間際の9月には1200万部、2020年2月には4000万部を突破しました。
どちらかというと鬼滅の刃は残酷描写もありながらも、作品へのハードルを下げたのはアニメでした。
コメントを残す