「いじめなんて どこにでもあることで むしろ出会わないほうが難しい」
「だから こんなことになるなんて思わなかったんだ」
傷だらけの悪魔、第一話は主人公・葛西舞が東京から田舎へ引っ越すところから始まります。
転校に伴う環境の変化、いじめる側からいじめられる側へとなってしまった舞の心境、人間関係を中心に物語が進んでいきます。
元々クラスのカースト上位グループに所属していた舞は、新しい学校でも集団になじもうと意識します。
ですが、転校先のクラスにはまさかの昔いじめていた相手「玖村詩乃」が・・・
舞と詩乃の出会い
玖村詩乃は「小田切」に苗字が変わっていたため、舞は最初は「玖村」に気づきませんが、
詩乃は「葛西」という苗字ですぐに気が付き、嫌悪感・憎しみに満ちた表情で舞を見つめます。
詩乃は慌てて取り繕い、普通に接するよう意識し、舞をトイレに誘導し過去のことを訊ねました。
「東京の学校って(中略)荒れてないの?いじめがひどかったりとかさ」という詩乃の言葉に
「偏見。なくはないけどどこにでもあることじゃん」「そんな大したことない」と返事をする舞。
その舞の言葉に、詩乃は信じられないといったように顔をゆがめました。
ここで詩乃の過去の回想に入ります。
手洗い場で髪をつかまれ水に浸けられていたり、トイレで便器に顔を突っ込まれていたり、かなり陰湿ないじめであったことを伺わせます。
舞は直接手を出している描写はありませんが、見ているだけ・見張り役であった舞にもかなりの憎しみを抱いている様子の詩乃。
場面は戻り、詩乃は手を洗っている舞の背中を押そうと手を伸ばしますが、考え直します。
いじめた側は忘れてしまっていても、いじめられた側は一生癒えることのない傷を背負っていく、
憎しみは人を狂わせるということがよくわかるストーリーになっています。
東京にあこがれるオシャレ女子・優里亜
物語のカギとなる藤塚優里亜。
田舎の高校の中ではオシャレなギャル(だけど中途半端)というのが舞から優里亜への印象でした。
しかし、舞は「集団に染まること」を重要視しているため、優里亜と仲良くする必要があるという打算から優里亜に笑顔を向け、
優里亜が喜びそうな話題をふっていきます。
「オシャレだね!髪、ピンクアッシュ?かわいいね!」
こんなことを言われていやな気持になる人は少ないでしょう。
優里亜も喜び、舞に「さすが東京人」と返しました。
その様子を冷たい表情で見つめる詩乃。
そんな詩乃に気づかず盛り上がる舞と優里亜。
「小田切さんなんかも東京に住んでたらしいけど、素朴でおとなしい子だからそういう感じじゃないし・・・」
優里亜の言葉に驚き、詩乃が同じ東京の人間だと喜んだ舞は詩乃の近くへ寄り「東京に住んでたの?なんで言ってくれないのー」と軽い感じで話しかけます。
詩乃は小さく何かをつぶやいた後、過呼吸に陥ってしまいました。
まわりはそんな詩乃を心配しますが、詩乃は「我慢しようと思ったけどやっぱ無理」と舞にいじめられていたことをクラス全員の前で告白しました。
さっきまでの「東京人」としての憧れの眼差しは一気に消え失せ、全員が敵にと変わる描写がリアルで、ぞっとします。
ここから本格的にストーリーが進んでいきます。
舞を救ってくれる仲間 千穂・唯
クラス全体、特に優里亜とその取り巻きたちからひどくいじめられていた舞は、いじめを誰にも相談できずに一人で耐えていました。
ところが、そんな舞を救ってくれる人が現れます。
最初は好意的なものではない理由で舞に接触する黒木唯。
じぶんがクラスメイトであることを隠しながら、チャットアプリを使い匿名で舞に忠告。
その後、舞は持ち前の冷静さと観察力でチャットの相手が唯だということに気づくのですが、そこからは頻繁に連絡を取り合います。
同時期に舞に差し伸べた近藤千穂。
千穂は自身にもいじめられていた経験(中学時代)があり、手探りで舞を救おうと一人で動いていきました。
担任の先生に告発しますが、適当に流されてしまいます。
結局先生たちや大人は頼りにならないとわかり、唯と千穂は連携をとることにしました。
舞は時間をかけてですが、このふたりに心をひらいていきます。
唯と千穂のおかげで協力者が増えていくのですが、中には舞に対してマイナスのイメージを抱いたままの人物も。
詩乃に漏れてしまう情報、反対にそれを利用する唯。
唯がいるからこその先が読めない展開にハラハラしました。
人を下に見て小ばかにしていた舞が、人を信用し成長していく場面は感動します。
楽しい文化祭?学級裁判?今後の展開は?
文化祭の演劇も問題なく終わり、後片付け・後夜祭にクラスメイトを集めることに成功した舞と仲間たち。
そこは、舞からの復讐の場のような印象があります。
優里亜やクラスメイトたちからされたことを挙げていき、舞は謝罪を求めます。
自分のけじめのために髪を切り落とし、舞に謝罪する優里亜。
一向に謝ろうとしないどころか、いつまでも舞が悪い、周りが悪いと自分の非を認めようとしない人。
優里亜以外もキャラクターが立っていて、それぞれのリアルな心情が描かれていました
最後に詩乃の番がまわってきますが、詩乃は親友を陥れてしまいます。
その後の親友の暴露から立場が悪くなってしまった詩乃にクラスメイトの視線が突き刺さります。
舞は過去の詩乃へのいじめを謝罪し、お互いこれで終わらせようと提案しましたが、それを拒絶して親友やクラスメイトからの信頼を失ってしまった詩乃がとても切なかったです。
舞の目的は、詩乃に間違いを認めさせることなのか、詩乃を苦しみから救い出すことなのか。
人気作品ゆえになかなかストーリーが進まないもどかしさを感じますが、次回の更新までに展開を予想する余裕を読者にも与えてくれているとプラスに捉える人も多いようです。
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