【聲の形】の大今良時先生が送るファンタジー作品、不滅のあなたへは2021年にNHKでアニメ化もされた大人気作品です。
キャッチコピーは「さよならから始まる、永遠の物語」。
「それははじめ 球だった」
不死身という能力をもつ主人公・フシは、刺激を得ることによってその姿を変えることができるようになります。
球から苔、苔からレッシオオカミ、レッシオオカミから少年へ…
言葉、食事、振る舞い、どれも最初は野性的ですが、「ヒト」として何もわからないままのフシが「ヒト」として生きられるようになるまでの成長はとても感動しました。
観察者の正体は?
フードつきの黒衣をまとい静かにフシに語りかける観察者は、ノッカーの襲来をフシに告げたりフシに苦悩を与えたりと、フシの成長にはなくてはならない存在です。
物語の序盤では語り部のような役割で、姿を現すことはありませんでした。
実体のない観察者はノッカーに気づかれることはないようですが、まるでこの世の全てを知り尽くしているかのような口調にフシが苛立ちを覚えることもありました。
フシと一緒に苛立っていた読者も少なくはないでしょう。
観察者はフシに直接「答え」を教えるようなことはせず「観察者」というその名の通り、必要以上に情報を与えず、ただ静かにフシを見守ります。
目の前に大きく立ちはだかる壁・困難が訪れた時にはヒントを与え、正しい方向に導く役割といったイメージです。
途中、ピオランを失ったことにより自暴自棄になってしまい、長い間海を漂ったりしていたフシのこともしっかり観察していたようです。
フシを突き放したかと思えば、よき相談相手のような描写もあり、整った容姿とミステリアスで掴みどころのない観察者に惹かれる人も多いでしょう。
後に観察者はフシに自分の力【接続】を与えるのですが、そこからが本当の物語の始まりといった印象でした。
結ばれなかったグーグーとリーン
タクナハ編で出会う仮面(被り物)の男の子グーグーは、酒爺に体を改造されていました。
その特殊な体にグーグーは悩んでいるのですが、後々グーグーの武器となります。
グーグーはリーンという女の子に恋をしていましたが、リーンのお目当てはフシ。
それに不貞腐れたグーグーは家出をしてしまいます。
出ていったグーグーに代わってフシが家事をするのですが、料理はひどいもので食べることができず、酒爺とピオランは今すぐグーグーを探してこいと激怒。
この頃、フシはまだ上手に喋ることができません。
仲直りの際にグーグーが仮面をとり「ほら、ブサイクだろ」と言ったのを聞いたフシはこの時「ブサイク」という言葉を習得し、意味を理解します。
クスリとなってしまうことが多いタクナハでの生活でしたが、ノッカーの襲来により最後はグーグーがリーンをかばい力尽きてしまいます。
ずっと仮面で顔を隠していたグーグーに口付けをするリーンの姿は涙なしでは見られないでしょう。
その後、フシはグーグーの姿に変わり、リーンに「旅に出る」と告げるのですが、リーンはそれが本当はグーグーではないと気づいていたのではないかということが、リーンの最後の言葉から感じとることができます。
ウラリス王国のボン
第1王子ボンシェン。
国民からは信頼されているようですが、王子とは思えない威厳のない振る舞いのせいで王位を継承をすることができませんでした。
ボンはフシを捕まえて手柄を立てることばかり考えていましたが、フシに助けられてからはその考えを改めたようです。
フシを排除しようとしている教団にボンが捕まってしまいまったとき、フシを悪魔だと認めなければ命はないといった場面でも冗談を言い、堂々と「僕はフシが大好き」と言ってのけるような度胸の持ち主です。
この後すぐにボンは死んでしまうのですが、フシのおかげで命を繋ぐことができました。
しかし、表向きは死んだことになったボンは国にいることができず、城を去ることを決意します。
ボンの恋のお話もここで知ることができます。なんともデリカシーのない男!とも思いますが、ボンらしくて笑ってしまいます。
また、ボンは優れた霊感の持ち主で死者の霊と会話することができ、観察者も見えているようです。
フシ以外に黒衣の観察者と会話できる(できた)のは現時点でピオランとボンのみとなります。
霊をおつかいに出すことのできるボンがフシの助けとなる場面も多く、ボンはかなりキャラクターが濃いため、ストーリーに出てこないと少し寂しくなってしまいます。
宿敵ノッカーの目的とは
ノッカーとは臓器や触手のような生物で、フシをどこまでも追いかけていきます。
守護団の団長の左腕に寄生しているもの(現在は18代目継承者ミズハの左手に)には意思がありましたが、その他のノッカーはただ闇雲にフシを襲っているように見えました。
ノッカーに敗北すると、フシのは【記憶】を奪われてしまいます。
今まで出会った人を忘れないように自分でメモを作っていたフシでしたが、それを見てもグーグーやマーチを思い出すことができす、無駄だったとつぶやく姿は切なかったです。
団長の左腕に寄生したノッカーがフシたちに伝えた「ノッカーの目的」は、観察者からファイを救うこと。
ファイとは、人々の体に宿る魂のようなものだとボンは解釈しました。
つまり、ノッカーは魂のある人間が存在する限り、人々を襲い続けるということです。
一度は落ち着いたノッカーの襲来も、ここにきてまたしつこさを増しています。
守護団の18代目継承者であるミズハとの今後も気になりますが、フシと仲間たちならどんな困難も乗り越えられると信じています。
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