実際にあったら怖い?「報復刑」複数のエピソードから選ぶおすすめポイント

マンガ「報復刑」は、愛する人を殺されてしまった家族は、その加害者に「家族が殺された方法と同じ殺し方」で報復することができるという架空の「報復刑」が制定された日本でのストーリーです。

死刑反対派・賛成派のどちらにも深く問いかけてくる作品になっています。

容姿が似通ったキャラクターがいるので、少し見分けがつきにくいのが難点でしたが、内容はとても面白いものです。

どういう経緯で報復刑が作られたのかも説明されており、無理やり感がなかったためすんなりと物語に入っていくことができました。

忙しい人にもうれしい1話読み切り

1話目は、面接帰りの愛・沙織を路上で殺害された・・・というストーリーです。

面接のあと寄ったコンビニで自分へのご褒美で少し高めのスイーツを購入する沙織。

その帰り道、桜を見上げ、去年の家族でのお花見を思い出します。

「お父さん、お母さん、私、絶対東京で美容師になってみせる」

そんな沙織の背後に襲いかかかった若者2人は、持っていた刃物で沙織を刺してしまいます。

悩み、苦しんだ父は報復刑を・・・

基本は1話読み切りとなっているので、1巻から読まなければ話が繋がらずに理解できないといったことはありません。

?50ページ前後で1話が終わり、また新しいエピソードが始まるという感じです。

そのため、まとまった時間が取れない方や、スキマ時間に楽しみたいという方にもオススメできます。

1つのエピソードのボリュームが少ないのではと不安に思われるかもしれませんが、1コマのセリフが多いため、物足りなく感じることはないでしょう。

内容が内容なので明るい気持ちになれるエピソードは少ないですが、報復刑を済ませて新しい人生を歩んでいける家庭、報復刑と言えど人を殺めてしまったことに苦しみ自ら命を絶ってしまう家族、それぞれの人生があり、考えさせられることが多いです。

報復刑の失敗

報復刑を望む者、望まない者それぞれの苦悩や葛藤が描かれていますが、中には報復刑を望み「やります」と言ったものの体の状態や精神の状態が悪く、報復刑を失敗してしまう人もいました。

妻を斧で殺害されてしまった老人は、すぐに報復刑を決めます。

しかし、83歳という年齢からくる筋力の衰えのせいなのか斧を振りあげたのと同時に、思いっ切り後ろに倒れこんでしまいました。

その姿を見て「じいちゃん頑張れ!」と叫ぶ孫でしたが、やはりまた倒れてしまいます。

それを嘲笑う加害者と「お前に殺されるくらいなら、私がこの手で(妻を)殺してやればよかった」と涙を流す’じいちゃん’の姿に、すべてを受け入れる被害者家族。

最初は報復刑を茶化していた孫でしたが、何度も立ち上がった’じいちゃん’の姿に心打たれ、最後は老人と2人でどこか晴れやかな表情をしていました。

失敗はしてしまったけれど、報復刑というもので少し救われたのではないかと思える終わり方でした。

いじめ・愉快犯・事故など殺人の原因はさまざまですが、加害者家族・被害者遺族の苦しみがそれぞれわかりやすく描かれており、

難しいことを考えるのが苦手でもテンポよく読み進めていくことができました。

報復刑の執行人

自身の恋人・麻衣を通り魔に刺されたことにより失った桜井瑛二。

麻衣の両親は報復刑をしないことに決め、桜井に麻衣のことは忘れるように言います。

報復権のなかった桜井はこれ以上どうすることもできず、ただそれを受け入れるしかありませんでした。

月日は流れ、麻衣の墓前で報復刑の執行人になったことを告げる桜井。

報復刑が遺族の救いになると信じていた桜井でしたが、現実はそんなに単純なものではありませんでした。

桜井は遺族に寄り添っているつもりでしたが、報復刑を終えた遺族がどうなってしまうのかという指導係の先輩・陣内からの問いかけに黙りこんでしまいます。

報復刑を「唯一の希望」として生きてきた遺族は、今後どうするのか・・・

前向きになれる遺族もいれば、加害者に「死なないでくれ、お前が死んだら私たちはこれからどうすればいいんだ」と縋る遺族もいて、やるせない気持ちになります。

人の命を奪うことで得られるプラスの要素はほとんどないのだという哀しさで胸が詰まりました。

理想と現実のギャップにショックを受ける桜井でしたが、陣内との間に信頼が生まれる瞬間もあり、おすすめのエピソードです。

その後も桜井と陣内は登場するので、ふたりのエピソードはしっかり覚えておくと物語をより楽しめます!

実際の事件をモチーフに

北九州監禁殺人事件など、実際にあった殺人事件をモチーフにしているものもあり、こちらは最後は救いのない終わり方ですが、連鎖を断ち切ることは難しいということを深く考えさせられる、心えぐられるようなエピソードでした。

虐待・連続殺人など、抵抗のできない弱い立場の被害者が惨い殺され方をした事件を見たときに「犯人も同じ殺され方をすればいいのに」と思ってしまったことが多々あります。

もし本当にそんな制度があったのなら、自分は救われるのか?壊れてしまうのか?

自分の大切な人を守るためにはどうしたらいいのか?何が正解なのか?

人間の感情の難しさが描かれています。

登場人物の中では、桜井が一番読者感情に近いように感じています。

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