【ネタバレ注意】漫画「Pandora Hearts」のストーリー考察!

漫画「Pandora Hearts」はスクエアエニックスの月刊誌Gファンタジーで連載されていた望月淳によるダークファンタジー作品です。

謎が謎を呼ぶ展開や魅力的なキャラクター、美麗な作画と、不思議の国のアリスをモチーフにした少し怖くてどこかおかしな世界観が魅力的で、大いに人気を博しました。

1度はアニメ化もされ、連載中も連載後も原画展やコラボレーションカフェなども展開され、いまだに根強いファンが多くいます。

中でも、ファンの間では「すべてのコマに伏線がある」とすら言われるほどの細やかな描写は目が離せないポイントです。

表情豊かなキャラクター達の隠された真意

「すべてのコマに伏線がある」と言われる所以は、主にキャラクター達の豊かな表情です。

他のキャラクターには見えていない部分で意味深な表情を浮かべていたり、前向きな言葉を発しているのに悲しそうだったり、様々な葛藤を抱えたキャラクター達の複雑な心境が丁寧に描かれています。

初めに読んだ時には違和感を覚えるような部分でも、後でそのキャラクターの背景を知ってから読み返すと納得ができるという場面ばかりです。

そのため、読者はみな「望月先生がこんな表情を描くならきっと何かちゃんとした理由や意味があるのだろう」と思って読んでいきます。

それでも期待を裏切られないところが、この漫画の凄いところです。

この物語に登場するキャラクター達の多くは複雑な背景事情や立場、様々な苦悩を抱えています。

その象徴となっているのが、この漫画を通してもテーマになっている鎖です。

「Pandora Hearts」のコミックスの表紙にはどれもキャラクターと共に鎖が描かれています。

その鎖がどれくらい、どこに絡まっているのかは、各キャラクターがいったい何に縛られているのかを端的に表しているのです。

例えば主人公オズの従者であるギルバートの場合は、腕に鎖が巻き付けられています。

それは、ギルバートがかつて敵対する者に無理やり操られて、その腕で最も大切な主人を傷つけてしまった過去があるからです。

対比される台詞や場面展開の数々

作品をよく読み込んでみると、キャラクター同士の出会いと別れのシーンには特に印象的なセリフや場面がまるで対比されるかのように描かれている点も非常に奥深いです。

 

例えば、序盤でヒロインのアリスと契約してなんとかアヴィスから現実世界へと戻ってきた主人公オズにブレイクという重要キャラクターが掛ける言葉は「おかえり」となっています。

ここだけ見れば、単純に元の世界へおかえりなさい、という意味なのだと感じるため、もしかしたら特に印象にも残らないシーンかもしれません。

しかし、物語の終盤でブレイクが自分の命の終わりを悟り、未来に進むオズ達に掛ける最期の言葉は「いってらっしゃい」なのです。

物語を追っているだけでは気付かないような細かな部分がもしれませんが、この漫画にはそうした対比が多く盛り込まれています。

もう1つは、途中でオズと友人関係になるリーオとエリオットという2人の少年の出会いと別れの場面です。

この2人は最初、大喧嘩から始まる最悪の出会い方をします。

しかしそんな出会いをしても、かえって本音を言い合える唯一無二の存在として、2人はやがて親友とも呼べる信頼関係を築いていくことになります。

そんな2人でも、凄惨な事件に巻き込まれていく中で、徐々に心はすれ違って行ってしまいます。

やがて最後には、喧嘩別れをして謝ることもできないままに今生の別れをすることになるのでした。

一緒にいた時間は確かにかけがえのないものだったはずなのに、出会いも別れも最悪の形になってしまうという非常に印象的な2人です。

見事なミスリードの連続で、必ず読者は騙される

伏線を張ったり回収したりという要素が盛り沢山な一方で、ミスリードが非常に多いのもこの漫画の特徴です。

それは時にはある意味で読者を騙すような描写までも含まれています。

だからこそ、確定した事項が覆らないことをキッパリと描き切るので、読者の「もしかしたら」という希望を下手に残さないところも好きな人には魅了だとも思います。

特に顕著なのは、「首狩り事件」と呼ばれる猟奇的な連続殺人事件の真相に関する描写です。

4代公爵家の1つのナイトレイ家では、後を継ぐはずの息子や娘たちが次々に首をはねられて亡くなるという残虐な事件に襲われます。

そのために身の危険を感じている末っ子のエリオットと、その従者リーオなのですが、途中からリーオが何かを知っているような様子や、エリオットに何かを隠しているような様子が描かれています。

読者にはもしかしてリーオが黒幕か、その仲間なのではないかと疑う気持ちが生まれていくような描かれ方です。

途中でリーオがオズに「自分がおかしいのかもしれないと不安になることがある」といったような言葉を吐露する場面もあります。

事件を追っている内に、犯人はチェインと呼ばれる化け物と違法に契約している犯罪者であり、その人物は必ず胸にその印が刻まれているはずだというところまでわかってきます。

その印の有無を確認するため、エリオットが自分の胸を1人で見るという場面があるのですが、その胸には何も描かれていません。

しかし、それはエリオットが自分自身が犯人であるという事実から目を背け、受け入れられなかったために見えた幻覚のようなものでした。

後から読者は、そこに本当は印が刻まれていたのだと知ることになるのです。

読み返す程に深みを増していく描き込み

「Pandora Hearts」は全24巻と非常にボリュームのある漫画作品ですが、盛り込まれている要素が多いことや、月刊誌であるということも踏まえ、実はコミックスで読み返す程に味の出る作品です。

何度も読み返すことで本当の意味がわかったり、繋がりに気付かされる場面が少なくありません。

複雑な世界観や時系列の物語をしっかりと理解し、その一つ一つのコマに込められた意味を紐解くことで、またぐっとその魅力に引き込まれていきます。

望月淳の次の連載作品である「ヴァニタスの手記」がテレビアニメ化や舞台化などをされる中、2022年で遂に15周年を「Pandora Hearts」もまた盛り上がりを見せています。

「Pandora Hearts」は多くのファンに長く愛されている作品であり、そこにはきちんとした理由となるだけの描き込みと魅力があるのです。

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