荒廃した地球の中でも人類が滅亡しないようにと、選ばれた人間が冷凍保存して未来へ送るという政府のプロジェクトが『7SEEDS』です。
春夏秋冬にちなんだのチーム、それぞれ7名ずつ選出されます。
基本的には健康で人間的にも優れた人間が選ばれるのですが、完全に穢れのない人間だけを選ぶのはかえってよくないのではと考える人も現れます。
そのため、夏のチームだけは超エリートチームと、落ちこぼれチームの2チームが存在します。
圧倒的な世界観に脱帽
この漫画の筆者は田村由美さんで、圧倒的な世界観と魅力ある登場人物を描くのに非常に長けた漫画家さんです。それ故、こちらの『7SEEDS』も幅広い層から非常に高い評価を得ています。
この『7SEEDS』の舞台は、隕石衝突後、一体何年経ったのか全くわからない未来の日本です。
未来へ放出されたメンバーの殆どは、未来へ行くことを全く知らされていないまま冷凍保存されていたため、何がなんだか分からないままいきなりサバイバル生活を強いられてしまいます。
当然、地形や生物形態も全く変わってしまっており、何が食べられるのか、どこが安全なのかも分かりません。
春夏秋冬それぞれのチームには7名以外に、一人だけ全てを知った上で未来へ来ることを決めたガイドが一人ずつ付いてきます。
そのガイドの説明を受けて未来に来たことを知らされても、殆どの人たちは半信半疑のままです。
しかし、実際に移動しながら旅を続けていく内に、隕石衝突後も僅かに残った各地の有名建造物などを目の当たりにし、ここが間違いなく未来の日本だということを認識していくのです。
未来の日本を題材とした漫画は少なくありませんが、こういったリアルな日本の地理に絡めたり、日本人ならではの思想感をふんだんに取り入れたものはなかなかありません。
とにかくスケールが大きく、一気に読めてしまう漫画です。
個性豊かな登場人物たち
『7SEEDS』の登場人物の殆どは、未来でその知識や技術などが活かせるようにと、皆何かしらの能力に長けています。
そのため、一人ひとりのキャラクターが非常に個性的です。漫画のストーリーの序盤は、まず春夏秋冬各チームごとに、未来へ放出された直後の様子からスタートします。
その中で、各キャラの人物像も描かれていきます。いきなり未来に来たことを悲観する者もいれば、逆に喜ぶ者もいますし、助け合って生き延びようとする者もいれば、独裁的な行動に出る者も出てきます。
この漫画の登場人物の中には、いわゆる完璧な人は登場しません。誰もが素晴らしい面と、駄目な面を兼ね備えており、その描写がとてもリアルなのです。
特に如実なのが唯一AとBの2チームが存在する夏のチームでしょう。Aチームは、生まれたときから未来に来ることを知らされており、ただひたすら知識やサバイバル術を叩き込まれたエリート集団です。
しかし、彼らは強制されることに慣れきっており、自分たちで選択して生きるということや逃げるということを全く学んでいません。人の感情を汲み取ることも出来ないのです。
一方で落ちこぼれのBチームは、特に優れた能力があるわけでもなく、むしろ現代社会に適応できないタイプの人間ばかりなのですが、人の心を読むのに長けており、能力はなくとも、ダメ元や根性だけで乗り切っていくのです。
その2チームの対比が凄まじく、色々と考えさせられること間違いなしです。
現実にもためになるリアルなサバイバル生活
『7SEEDS』は、とにかく衣食住をどう確保するかということに奔走します。安全な食物を見分ける方法や、身の回りの植物の活用の仕方など、現実にも活用できるノウハウがたっぷり詰まっています。
植物の種類によって水辺の有無を確認したり、地形を見て安全な場所を見極める、暑い時や寒い時の対処方法など、非常に勉強になりますよ。
特に、とことん生きる知恵を叩き込まれた夏のAチーム編では、動物や植物の活用方法だけでなく、水の排水の仕方や石鹸の作り方、建物の作り方などもとことん細かく描かれており、毒を持った動物の特徴や、罠のはり方なども登場します。
人間が生きていくためには、まずどんなことを優先的に行うべきなのかといったことまで描かれており、とてもリアルです。
生物学、地質学、医療、建築学など、あらゆるジャンルにおける知識やノウハウが散りばめられており、「こんな時にはこうすればいいのか!」「こういった場所ではこういった面に気をつけなければならないのか」など、知的好奇心をくすぐられるシーンが多いのも魅力的ですよ。
また、人間関係で気をつけるべきポイントも押さえられています。個性が強すぎる人物同士が集まると必ずトラブルが起きるものです。
その中でどう助け合っていくのか、どこで折り合いをつければいいのかといったことも参考になることでしょう。
未来編だけでなく過去編も魅力的
『7SEEDS』では、基本的に未来での出来事を描かれているのですが、時折、地球に残された人たちのことを描く過去編が登場します。
人間が滅亡してしまうことを知ってしまった人たちが、一体どういう感情をもって最期を迎えたのかという点が描かれています。
未来には絶望しかないことを知った人たちの心の揺れ動きが、とても心に刺さってきます。自分だったらどうするか、この立場だったら出来るのかといったことも考えさせられます。
こちらの『7SEEDS』は既に完結しており、外伝編も出ています。本編を一気読みしてしまった後は、是非外伝編も読んでみてください。
本編で拾いきれなかった伏線などもしっかり回収されており、清々しいラストになっています。
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