実写ドラマ・北斗の拳の爆笑の撮影現場!「北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝」

少年ジャンプ屈指の伝説的人気バトル漫画「北斗の拳」、圧倒的な個性のキャラクターや迫力あるバトルに熱いストーリー、思わず笑いを誘う

ハイテンションな展開等、あまりにも数多くの魅力を持つこの作品はこれまでにもいくつものスピンオフ作品が作られてきました。

ですがこの漫画、「北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝」はもし北斗の拳が実写ドラマだったら?というまったく別の切り口から生まれた、

過去の作品とはひと味もふた味も違う傑作であることを断言します。

特撮出身の監督にやたら羽ばたきたがるアイドル俳優等、役者もスタッフも個性的

この漫画には数々の個性的なキャラクター達がおり、楽しく熱いドラマを展開しますが、当記事ではその中でも特に印象的な3人のキャラをご紹介します。 

まずは監督、特撮出身でアクションや特殊技術を使った撮影を得意としており、役者を「チャン」付けで呼びます。 破天荒なアイデアを思いついては役者やスタッフに度々無理難題を要求してきますが、いい作品を撮ることに対して良くも悪くも一切妥協がないプロフェッショナルです。

次にケンシロウ役の俳優・橘、イケメン俳優として売っていましたがケンシロウ役に抜擢されます。 筋肉は肉襦袢のスーツで太い眉毛は貼り付けで、筋肉で革ジャンを破るシーンでは周りから無数のウインチで引っ張られる等ある意味監督のアイデアの主な被害者ですが、撮影が進むにつれてお墓に種モミをまくシーンをいらないからという理由で思いつく等、異才を発揮していきます。

そしてシン役の菱川、やたら「羽ばたく」という表現を使いたがるハリウッドを目指す若い野心家のアイドルで、今回が俳優デビュー。 最初は監督の無茶なアイデアに嫌悪感を示して撮影に消極的でしたが、次第に意欲を見せ始め白パンツ一丁のほぼ裸のシーン等にも堂々と出ていきます。

読者の秘孔(ツボ)を突きまくる絶え間なく続くギャグの数々

この3人以外にもユリア役の友美、リン役の子役・さやかちゃん等数々のキャラクターが登場しますが、彼ら自身のやりとりと撮影のために努力や苦労をする姿や、作品の先行きを案じる現場の様子が実に楽しく愉快なギャグとして描かれており笑いをこらえずにはいられません。

格闘技等の心得もないのに、ウインチで釣り上げられての空中戦等の過酷なアクションを強いられる橘をはじめ、ユリアに罵倒されるシーンやケンシロウを拷問して「女の心変わりは恐ろしいのお!」というセリフを言った際に嫌悪感を示されたりしてその度ショックを受けてメンタルの弱さを見せる菱川、シンの白パンツ一丁の姿に笑いをこらえきれずに本番中に吹き出す友美等、役者達の行動も笑いを誘います。

さらに監督の派手な演出によってどんどん過激な内容にエスカレートしていくにつれて、平日夜に全国に放送可能なのかを疑ったり視聴者から苦情が殺到するのではと不安に思ったりするキャラクター達の様子等、昭和当時のごく普通の現代が舞台ならではの世間の一般常識と破天荒な作品内容とのギャップから生まれる笑いもたまりません。

このような絶えることのないギャグ描写が漫画の面白さの基本的な骨格をなしています。

アクシデントも味方につける!最高の画を目指す撮影現場の悪戦苦闘

こんな監督の撮るドラマなので撮影現場では苦労が絶えません。 ですがその監督ですら予想しなかったアクシデントが頻発して、それを逆に活かしてより良い作品にしようとする様子が描かれるところもこの作品の魅力のひとつです。

元々ケンシロウは発頸という武術で戦って技を受けた敵キャラは人形が目や口から血を流して死ぬという設定でしたが、人形の不具合で血を流すどころか爆発してしまいます。 ですがそれを見た監督はそのインパクトを作品に必要なものと考えたことから秘孔を突いて敵を爆発させて倒すという北斗神拳のアイデアが生まれたり、アクションの撮影中に橘が負傷して毎回の決め技のはずだった北斗百裂拳が使えなくなったことから、他の技である岩山両斬波や北斗残悔拳が考え出されます。

また、トラウマのせいでただでさえ過剰な痛がりであるハート役の役者に肉襦袢を着せたまま爆発させるという無茶な撮影を強いて、「ひでえ」というはずだった言葉が「ひでぶ」という名セリフになったりという怪我の功名のようなことも度々起こります。

これらのように実際の撮影現場さながらのアドリブ感も描かれていて、これらの描写が丁寧にされていることが漫画の面白さをさらに際立たせています。

殺伐とした世界を撮る撮影現場、でもその様子は楽しく優しく和気あいあい

ドラマの撮影現場につきものの撮影中に生まれる多くのエピソードが楽しくも優しく描かれているのも密かな魅力のひとつです。

作中では地獄のような世界で殺し殺される殺伐とした関係である種モミじいさん役の大ベテランの死に役の俳優と筋肉ムキムキの無法者達を演じるプロレスラー達が、カメラの外では和気あいあいと語りあったりそれまでの仕事をねぎらったりするシーンが優しく温かく描かれていたり、苦情の殺到を不安視していたドラマが数多くの視聴者から大絶賛を受けて撮影継続が決まった際には役者、スタッフ関係なく喜び合う様子が描かれています。 映像のプロであるキャラクター達がお互いを高め合い讃え合う姿がただのギャグ漫画というだけでなく、番組撮影ドラマとしても素晴らしいものであることを見せてくれます。

このようにギャグや撮影現場ドラマ等の数々の魅力的な面を併せ持つこの漫画は、ただの人気漫画のスピンオフのひとつにとどまらない素晴らしい傑作であると言っても過言ではないでしょう。

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