1995年から1996年にかけて放送されたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』。
放映時は、夕方のよいこが見る時間でありながらも、いろいろと問題シーンがあった為、抗議の電話もあり、最後は消化不良の内容で終わり、
内容が複雑ながらも深読みできるアニメとして「新世紀エヴァンゲリオン」は社会現象をも引き起こしました。
本作の人気の秘密はどこにあるのか、なぜ「エヴァ」はこんなにも観る者の心に刺さるのか、考察していきます。
目次
斬新なストーリー
第1話〜第6話
時は2015年。15年前に起きた南極大陸における大爆破【セカンドインパクト】により地軸は傾き、年中常夏の国になってしまった日本。
かつて箱根と呼ばれた土地は、第三新東京市とよばれるようになっていました。その第三新東京市に、1人の少年が訪れたところから話は始まります。
碇シンジは聞いたことも見たこともない巨大兵器『エヴァンゲリオン』の初号機に乗るよう父親に唐突に言われ、負いたくもない責任をおわされたシンジは、いやいやながらもエヴァに乗ります。
エヴァはなぜ使徒と戦うのか、使徒の正体とは?ゲンドウがときおり話すゼーレとは?人類補完計画とはなんなのか?謎多きパイロット、綾波レイの正体は?序盤から様々な伏線が張られていました。
第7話〜第16話
アスカが登場したことでエヴァはそれまでのシリアスな雰囲気が一転、コミカルな話が多くなります。
しかし、陽気な雰囲気とは裏腹に、加持が暗躍しネルフの裏側が徐々にわかってくるのもこのころです。
第17〜第19話
トウジが参号機に搭乗した第17話それまでの明るかった雰囲気がシリアスに戻ります。
第20話〜第24話
初期以上にシリアスな雰囲気となる。より深まる謎。エヴァ初号機の正体とは?使徒はなぜ襲ってくるのか?人類補完計画とは?
伏線は回収されないまま、物語は進んでいきます。
24話で唐突にでてきた渚カヲル。シンジに近づき、親交を深めるも弐号機を自在に操りセントラルドグマに侵入しサードインパクトを起こそうとします。
渚カヲルの正体は使徒だった。しかしなぜ人の体なのか?セントラルドグマとは?サードインパクトとは?アダムとは?リリスとは?ストーリーも佳境にはいったにも関わらず、謎を残したまま25話へと続きます。
25〜26話
エヴァTV版でもっとも話題になった25話、26話。前回の話から脈略なく、精神世界での会話劇となってしまい視聴者は大混乱。
なにがいいたいのかわからないまま、26話ではシンジが突然、みんなから「おめでとう」とか言われて話が終わってしまいます。
漫画を見たことない人でも充分に楽しめるキャラクター
碇シンジ
本作の主人公である第3の少年、エヴァンゲリオン初号機専属パイロット。
特務機関NERV司令である碇ゲンドウを父に持ちますが、劇中では親子の関係はギクシャクしているようです。
新劇場版『破』においては、すれ違いの関係を綾波レイが取り持つように食事会の計画を立てますが、参号機起動実験中の爆発で実行されることはありませんでした。
非常にナイーブな性格で、対人関係の争いを好まず、自分から主張をすることがありません。人の言うことにはおとなしく従う、リツコ曰く「それがシンジの処世術」とのことです。
綾波レイ
本作のヒロインである第1の少女、エヴァンゲリオン零号機パイロット。
感情を持っていないかのように冷徹に振舞う彼女ですが、ゲンドウの計画通りにシンジと接触・対話することで、次第に他人への心の壁が取り払われていきます。
惣流・アスカ・ラングレー(式波・アスカ・ラングレー)
本作のヒロインのひとりで第2の少女、エヴァンゲリオン弐号機のパイロット。
テレビアニメ版と新劇場版では若干性格が異なりますが、基本的に気が強い人物像となっています。
真希波・マリ・イラストリアス
新劇場版『破』より新登場した4人目のエヴァパイロットです。
メガネにツインテールの容姿が特徴的で、どこかおどけた性格の彼女は、とき折真相を知っているような口ぶりを見せることがあります。
葛城ミサト
特務機関NERV戦術作戦部作戦局第一課所属、階級は一尉。後に三佐へと昇格します。
南極調査隊の一員であった父に同行しており、セカンドインパクトの生き残りでもあります。胸のペンダントは彼女をエントリープラグにかくまった父から託された形見の品です。
「14歳」の子どもたちの葛藤
エヴァでキーになるのは、言うまでもなく碇シンジをはじめパイロットたちの「14歳」という年齢である。
アメリカの発達心理学者Erikson, E.H.の考えに基づくと、14歳の心理的課題は、「自我同一性の獲得(アイデンティティの確立)」であり、「自分がどんな人間なのか」を知ることです。
それまでは親から与えられた価値観に沿って生きた子どもが、それ以降はオリジナルの新たな価値観の獲得が必要となります。この課題を達成できなければ、自身の役割に混乱が生じどのように生きればよいのかわからない「自我同一性の拡散」状態となり、社会適応が上手くいかなくなります。
この時期に見られる非行などの問題行動は、子ども時代に比べ複雑な社会を前にして、上手く対応することが出来ない彼らの心の叫びなのです。
エヴァに登場するパイロットたちは、そんな発達段階にいる年ごろの子どもたちなのです。
しかし、アイデンティなるものは存在するのであろうか? アイデンティ概念を提唱したErikson, E.H.はユダヤ人であり、「唯一の神と契約する人間も唯一の存在でなければならない」との信念からアイデンティを着想しました。
この概念は、ユダヤ教圏だけでなく、キリスト教圏及びイスラム教圏や近代日本でも一般的です。
近年その信憑性は疑問視されているものの、エヴァの登場人物たちは、このアイデンティティが確立されていないがゆえに「確立された本当の自分」を求めていると解釈できます。
人気の理由
シンジとアスカの性格は異なっているが、それぞれが「コミュ障」の烙印を押されかねない不器用さを備えています。
思春期外来を受診する若者にも、同じようにコミュニケーションに悩みを抱えている人が多いのです。
従来であれば、アイデンティティを確立できなかった若者は、何らかの反応が生じ人間関係を構築できなかったものです。
彼らは、自分たちが持っていない「幻のアイデンティティ」に拘り苦しんでおり、自らと同じ悩みを抱えるエヴァの登場人物に自分を重ね合わせていると考えています。
自分の居場所を見つけられず、悩みを抱える若者がエヴァンゲリオンのパイロットたちに共感するからこそ、放送から26年経過しても熱心な若いファンが絶えないのではないでしょうか。
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