話題沸騰!「タコピーの原罪」の奥深さについて考察【ネタバレ注意】

ジャンププラスで週刊連載して一躍有名になった「タコピーの原罪」。

最新話が投稿されるたびにSNSのトレンドにいくつもの関連ワードが入り、非常に話題の作品となりました。

物語は様々な問題を抱えている小学生たちのもとに、遠い星からハッピー星人という宇宙人がやって来るところから始まります。

ゆるっとしたキャラクターの無垢な宇宙人であるタコピーを中心として、その絵柄からは想像できないほど過酷な物語が展開されます。

読者を引き込む圧倒的な描写力

小学生と宇宙人との交流を起点として描かれるのは、いじめや、DV、兄弟間の格差など、決して軽くはないテーマばかりです。

中には問題をこじらせて、自殺や殺害に至ってしまうケースも何度も描かれていきます。

その描写のどれもが非常に丁寧に描かれていて、どこか現実味を感じさせるところがこの漫画作品のすごいところです。

例えばいじめっ子のまりなちゃんという少女は、家庭内で父親が母親に暴力を振るったり、他の女性と関係を持ったりと問題を抱えています。

しかしそんな家庭にも、過去には家族円満な時期もありました。

そうした家庭の様子を描く上で、非常に細かいところまで関係性が描かれている例として、エアコンの温度設定があげられます。

父親が優勢な場面では低い温度で、母親が優勢な場面では高めの温度、そして二人が仲睦まじかった頃は平均的な温度で設定されています。

このようなやけにリアルで緻密な描写が漫画のあちこちに隠されているため、読者の考察が加速しました。

毎回新しい話が公開される度に、読者は何度も読み返しては描写の意味を見出そうとします。こうした考察がSNSに溢れかえることで、更に作品は話題を呼び、人気も増していきました。

それはどんなに細かい描写にも手を抜かず、難しいテーマと向き合った結果だとも言えるでしょう。

視点によってガラリと見え方が変わる面白さ

もう一つ描写の巧みな部分として、見えている視点によって見え方が全く違う、という演出が多様されている点です。

例えばこの漫画作品のヒロイン役ともいえる少女、しずかちゃんですが、彼女は同級生の間では非常に美少女として見られています。

しかし、母親と離婚して現在は東京に住んでいる父親から見たしずかちゃんは、汚れていてみすぼらしい少女として描かれています。

魅力的だと感じている人物から見えている印象と、そうでない場合との落差がここでははっきりと表現されているのです。

同様に、東(あずま)くんという少年が母親からご褒美に貰うパンケーキの描写も、その時の心理描写と密接にリンクしています。

なかなか母親に認められず、食べたくても食べられないパンケーキというのは非常に美味しそうに描かれているのに対し、母親に見限られて差し出されたパンケーキは本当に美味しくなさそうに表現されています。

こうした見え方の違いを上手く織り込んだところにも、読者を引き込む魅力があります。

ほんの一コマでもガラリと印象を変えることで、とても記憶に残る場面となるのです。

またヒロインともいえるしずかちゃん視点の描写を最後まであえて描かないことで、彼女の行動の歪さや恐ろしさを印象付けました。

それをクライマックスでは、彼女の心情を全てはっきりと吐露させたことで、彼女もまた一人の孤独な小学生だったのだと気づかされます。

こういった読者を巻き込んだ視点の展開の仕方は非常に巧みです。

二転三転するテンポのいいストーリー展開

この漫画作品が読者を引き込む一つの要素として、怒涛で移り変わっていくストーリー展開に目が離せなくなることもあげられます。

はじめに出会ったしずかちゃんがいじめを苦に自殺してしまうという衝撃的な場面を皮切りに、宇宙人であるタコピーが持ち込んだ不思議な道具によって時間を巻き戻し、しずかちゃんが死なないようにやり直すというループの物語が幕を開けます。

そうして何度も繰り返し、しずかちゃんを救おうと無我夢中で動いた結果、今度はまりなちゃんを誤って殺害してしまい、道具が壊れて過去をやり直せなくなってしまうのです。

世の中には所謂ループものと呼ばれる、時間を何度も遡ってはやり直し、最善の道を探すという物語はたくさんありますが、その中でも少々異質で衝撃的な展開が次々と起こっていきます。

この漫画作品は上下巻で完結という短い作品であるため、駆け抜けるような、転がり落ちるような疾走感がまた強い魅力です。

いじめなどの重たいテーマをしっかりと書き込んでいるからこそ、漫画全体としてはどんどん話が進んでいくことで、読者に苦痛を感じさせないようになっています。

週刊連載では、毎回のようにどんでん返しがあるため、毎週続きが気になるところで終わるという楽しみ方もありました。

一気に読んでも勿論楽しめる作品ですが、そうした連載作品ならではの楽しさも大きかったと言えるでしょう。

話題作となったのには理由がある!

SNSで毎週トレンド入りをしたり、本屋でもコミックスが売切れたりと話題作となった「タコピーの原罪」ですが、それだけ人々を引き付ける魅力のある作品です。

長編作品を読むのは集中力や時間の面で難しいという人にも、短時間で追いつける話題の漫画としては非常にオススメです。

特にSF作品や、昔の藤子不二雄作品などが好きな人には面白いと感じられるのではないでしょうか。

いじめやDVなどの生々しい描写があるため、そういった表現が苦手な人には少々キツいと感じる部分もあるかもしれません。

しかし、そういった苦手意識がないのであれば、1度読んでみて損はない作品と言えるでしょう。

誰もがそれぞれの問題を抱えており、そのすべてを綺麗に解決しきることはできないという面でも、非常に現実味のある話となっています。

「タコピーの原罪」は単純に物語を楽しむだけでも楽しく、深く読み込んで考察してみることもできる、魅力の詰まった漫画作品です。

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